事業再構築補助金の補助額と補助率はどうなっているの?
(最終更新日:2023年5月23日)
事業再構築補助金の補助額は他の制度に比べて大きいと聞いたんだけど具体的にはいくらなの?
事業再構築をする際、全額補助されるのではなく、一部は自己資金が必要と聞いたんだけど、具体的な補助率はどうなっているの?
この記事では事業再構築補助金の補助額と補助率について解説します。
まず、中小企業か中堅企業かによって応募できる枠が異なっており、その枠によって補助額、補助率、そして補助対象事業の要件が異なっています。
中小企業と中堅企業の分類についてはこの記事で解説しています。
- まずは中小企業について確認し、
- 次に中堅企業について確認し、
- 最後にそれぞれの枠ごとの補助対象事業の要件について確認します。
通常枠は第10回目公募から削除されました。
また、成長枠とグリーン成長枠に申請する事業者を対象に上乗せ枠(卒業促進枠、大規模賃金引上促進枠)が追加されています。
- 成長枠(第10回目公募から新設)
- グリーン成長枠(エントリー)(第6回目公募から新設)
- グリーン成長枠(スタンダード)(第6回目公募から新設)
- 産業構造転換枠(第10回目公募から新設)
- サプライチェーン強靱化枠(第10回目公募から新設)
- 物価高騰対策・回復再生応援枠(第10回目公募から新設)
- 最低賃金枠(第3回目公募から新設)
1.中小企業の補助額と補助率
枠 | 従業員数 | 補助額 | 補助率 |
---|---|---|---|
成長枠 | 20人以下 | 100万円 - 2,000万円 | 1/2 (大規模な賃上げを行う場合2/3) |
21-50人 | 100万円 - 4,000万円 | ||
51−100人 | 100万円 - 5,000万円 | ||
101人以上 | 100万円 - 7,000万円 | ||
グリーン成長枠 (エントリー) | 20人以下 | 100万円 - 4,000万円 | |
21-50人 | 100万円 - 6,000万円 | ||
51−100人 | 100万円 - 8,000万円 | ||
グリーン成長枠 (スタンダード) | - | 100万円 - 1億円 | |
産業構造転換枠 | 20人以下 | 100万円 - 2,000万円 | 2/3 廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ |
21-50人 | 100万円 - 4,000万円 | ||
51−100人 | 100万円 - 5,000万円 | ||
101人以上 | 100万円 - 7,000万円 | ||
サプライチェーン強靱化枠 | - | 100万円 - 5億円 | 1/2 |
物価高騰対策・回復再生応援枠 | 5人以下 | 100万円 - 1,000万円 | 2/3 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4) |
6-20人 | 100万円 - 1,500万円 | ||
21-50人 | 100万円 - 2,000万円 | ||
51人以上 | 100万円 - 3,000万円 | ||
最低賃金枠 | 5人以下 | 100万円 - 500万円 | 3/4 |
6-20人 | 100万円 - 1,000万円 | ||
21人以上 | 100万円 - 1,500万円 |
従業員の定義:中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法第20条の規定に基づく 「予め解雇の予告を必要とする者」と解されます。これには、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者は含まれません。また、役員、個人事業主も含まれません。パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、非正規社員、出向者は含まれる可能性があります。
成長枠について
成長分野への大胆な事業再構築に取り組む中小企業等の事業再構築を支援するものです。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均4.0%以上増加に加え、以下の要件をいずれも
満たすことが必要です。
- 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
- 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
グリーン成長枠について
研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援するものです。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均4.0%以上増加に加え、以下の要件をいずれも
満たすことが必要です。
- グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発又は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと
- 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
産業構造転換枠について
国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業再構築を支援するものです。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均4.0%以上増加に加え、以下の要件をいずれかを
満たすことが必要です。
- 過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属していること
- 又は、地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域に属しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること
1. について、業界団体が要件を満たすことについて示した場合、その業種・業態を指定業種として指定します。又は、コロナ後~今後の10年間で市場規模が10%以上縮小することについて、応募時に客観的な統計等で示していただき、事務局の審査で認められた場合にも対象となります。(過去の公募回で認められた業種・業態については、その後の公募回では指定業種として公表します。)2.について、要件を満たす地域であることについて、自治体が資料を作成し、証明する必要があります。公募開始時に指定された地域を公表します。
サプライチェーン強靱化枠について
海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援するものです。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加に加え、以下の要件をいずれも
満たすことが必要です。
- 取引先から国内での増産要請があること
- 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
- 交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと
- 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
物価高騰対策・回復再生応援枠について
業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者、原油価格・物価高騰等の影響を受ける中小企業等の事業再構築を支援するものです。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加に加え、以下の要件をいずれかを
満たすことが必要です。
- 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が2019~2021年と比較して10%以上減少していること
- 中小企業活性化協議会等から支援を受け、再生計画等を策定していること
最低賃金枠について
最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な中小企業等が取り組む事業再構築を支援するものです。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加に加え、以下の要件をいずれも
満たすことが必要です。
- 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年と比較して10%以上減少していること
- 2021年10月から2022年8月までの間で、3月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること
最低賃金額については、厚生労働省HPの地域別最低賃金額を参照してください。
上乗せ枠について
成長枠又はグリーン成長枠に申請する事業者に対し、成長・賃上げのインセンティブを付与するために事業再構築補助金では、3つの施策を用意しています。なお、1と2の併用はできません。
- 卒業促進枠補助事業終了後3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業することが必要です。この条件を達成した場合、補助金額の上限が2倍となります。補助対象経費は、成長枠又はグリーン成長枠のものと分ける必要があります。
要件達成後、実績報告を提出いただき、その確認をもって補助金が支払われます。 - 大規模賃金引上促進枠以下の要件をいずれも満たすことが必要です。
・補助事業の終了後3~5年の間に、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
・補助事業の終了後3~5年の間に、従業員数を年率平均1.5%以上増員させることこの条件を達成した場合、補助金額が上乗せされます。なお、補助率は1/2(中堅は1/3)です。
なお、グリーン成長枠(エントリー&スタンダード)、産業構造転換枠、サプライチェーン強靱化枠については、次の条件を満たす場合、既に採択されている事業者でも申請が可能です。
ただし、通常の審査に加え、一定の減点を受けるため注意が必要です。
- 既に事業再構築補助金で取り組んでいる又は取り組む予定の補助事業とは異なる事業内容であること
- 既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金があること
2. 中堅企業の補助額と補助率
枠 | 従業員数 | 補助額 | 補助率 |
---|---|---|---|
成長枠 | 20人以下 | 100万円 - 2,000万円 | 1/3 (大規模な賃上げを行う場合1/2) 卒業促進枠:成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限に準じる 大規模賃金引上促進枠:100万円~3,000万円 |
21-50人 | 100万円 - 4,000万円 | ||
51−100人 | 100万円 - 5,000万円 | ||
101人以上 | 100万円 - 7,000万円 | ||
グリーン成長枠 (エントリー) | - | 100万円~1億円 | |
グリーン成長枠 (スタンダード) | - | 100万円~1.5億円 | |
産業構造転換枠 | 20人以下 | 100万円 - 2,000万円 | 1/2 廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ |
21-50人 | 100万円 - 4,000万円 | ||
51−100人 | 100万円 - 5,000万円 | ||
101人以上 | 100万円 - 7,000万円 | ||
サプライチェーン強靱化枠 | - | 100万円 - 5億円 | 1/3 |
物価高騰対策・回復再生応援枠 | 6-20人 | 100万円 - 1,500万円 | 1/2 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3) |
21-50人 | 100万円 - 2,000万円 | ||
51人以上 | 100万円 - 3,000万円 | ||
51人以上 | 100万円 - 3,000万円 | ||
最低賃金枠 | 5人以下 | 100万円 - 500万円 | 2/3 |
6-20人 | 100万円 - 1,000万円 | ||
21人以上 | 100万円 - 1,500万円 |
それぞれの枠ごとの補助対象事業の要件
それぞれの枠頃の補助対象事業の要件を下の表にまとめました。
表の下には要件の詳細を解説しています。
枠 | A 事業再構築要件 | B 売上高等減少要件 | C 支援機関要件 | D-1 付加価値額要件(3%) | D-2 付加価値額要件(4%) | D-3 付加価値額要件(5%) | E-1 グリーン成長要件(エントリー) | E-2 グリーン成長要件(スタンダード) | F 市場拡大要件 | G 市場縮小要件 | H 給与総額増加要件 | K 最低賃金要件 | J 再生要件 | K 補助率引上要件 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
成長枠 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||||||||
グリーン成長枠(エントリー) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||||||||
グリーン成長枠(スタンダード) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||||||||
産業構造転換枠 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||||||||||
サプライチェーン強靱化枠 | ||||||||||||||
物価高騰対策・回復再生応援枠 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |||||||||
最低賃金枠 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
A 事業再構築要件:事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること。事業再構築の定義、類型についてはこの記事で解説しています。
B 売上高等減少要件:2022 年 1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が対2019~2021 年の同 3 か月の合計売上高と比較して10%減少していること。売上高に代えて付加価値額を用いることも可能でその場合の減少率要件は15%以上減少となる。
C 認定支援機関要件:事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が 3,000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみ)と策定していること
D-1 付加価値額要件(3%):補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了月の属する申請者における決算年度の付加価値額とする(付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費)。
D-2 付加価値額要件(4%):補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 4.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了月の属する申請者における決算年度の付加価値額とする(付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費)。
D-3 付加価値額要件(5%):補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了月の属する申請者における決算年度の付加価値額とする(付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費)。
E-1 グリーン成長要件(エントリー):グリーン成長戦略「実行計画」14 分野に掲げられた課題の解決に資する取組であって、その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発又は従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行うこと。
E-2 グリーン成長要件(スタンダード):グリーン成長戦略「実行計画」14 分野に掲げられた課題の解決に資する取組であって、その取組に関連する 2 年以上の研究開発・技術開発又は従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行うこと。
グリーン成長枠については、次の条件を満たす場合、既に採択されている又は交付決定を受けている事業者でも申請が可能です。
- 別事業要件:既に事業再構築補助金で取り組んでいる又は取り組む予定の補助事業とは異なる事業内容であること。
- 能力評価要件:既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金があること。
F 市場拡大要件: 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10 年間で、市場規模が 10%以上拡大する業種・業態に属していること。
G 市場縮小要件:現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10 年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること、または地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の 10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の 10%以上を占めること。
H 給与総額増加要件:補助事業実施期間の終了時点が含まれる事業年度の給与支給総額を基準とし、補助事業終了後の3~5年の事業計画期間中、給与支給総額を年率平均で2%(賃上げ加点を受ける事業者は3~5%。)以上増加させること。
K 最低賃金要件:2021 年 10 月から 2022 年 8 月までの間で、3 か月以上最低賃金+30 円以内で雇用している従業員が全従業員数の 10%以上いること。
J 再生要件:再生事業者(Ⅰ.中小企業活性化協議会等において再生計画を策定中の者又はⅡ.中小企業活性化協議会等において再生計画を策定済かつ再生計画成立後3 年以内の者)であること。
K 補助率引上要件:.成長枠・グリーン成長枠に申請する事業者で、補助率引上げを受ける場合には、補助事業実施期間内に給与支給総額を年平均6%以上引き上げると共に事業場内最低賃金を年額45円以上引上げること。
この条件を達成した場合、補助率を2/3(中堅は1/2)に引上げられます。ただし、事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることが出来なかった場合、差額分(補助率1/6分)の返還を求められますので注意が必要です。